たんたんの 【ストレンジャー ザン パラダイス】 ~ 聖地をめぐるとても個人的な記憶 ~ Vol.33 台湾 縄文センチメンタルジャーニー 7 スピリチュアルな世界にあたまのてっぺんからあしのつまさきまでどっぶり 浸かって13年。その間に訪れた、記憶に残っている無数の聖地での体験を かなりいいかげんな旅の記憶でつづったエッセイ。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 前回からの続きです。 この原稿は、以前ブログに掲載した原稿をもとに
あらたな記憶とその後変化したわたしの視点での思いを
変更加筆しています。
ですから、すでにブログで読まている方も
あたらしい視点が加えられたとおもって
読んでくだされば幸いです。 亜熱帯の真昼間、朦朧としながらも日本から遠く離れた台北で北投温泉に入った翌日、
わたしを含む台湾慰安旅行一行が向かったのは
北投温泉とならぶ、台湾のパワースポット…九份(フン)。 ここは皆さんよく御存じの『千と千尋の神隠し』の舞台となった、
あの妖怪たちの集う街のモデルとなった場所。
あるいは映画マニアの方ならば、侯 孝賢監督による(ホウ・シャオシェン)1989年製作の
台湾映画「非情城市」の舞台として世界的な観光地となった街としてご存じでしょう。 候監督はこの作品でヴェネチア国際映画祭の最高賞である金獅子賞を受賞し、
同作品は世界中で大ヒットし、同時に九份も世界中の人々に知られ、
国際的な観光地となったわけです。 そんなわけでわたしとしてはどうしても、はじめて台湾を訪れたときに
どうしても行きたい…とおもいながら、まだ3歳の息子を連れていくには
少々無理があるとあきらめた経緯がありました。 なので、ふたたびすでに息子も小学三年生になったこの台湾再訪では
ぜひ行ってみたい…と思っていたのです。
そんな思いを胸に秘めながら到着した九份は、
思っていた以上にミステリアスなエネルギーに満ちた場所でした。 とくに提灯がたくさん飾られてる茶芸館の界隈は
あの湯屋のある町の雰囲気とまったく同じ街並み。
はじめて足を踏みいれたときには目を見張るほどの妖しい美しさを放っていました。 平日だというのに、九份は
あの豚ちゃんになってしまったパパとママがごちそうを貪った
かなり怪しい食べ物やが軒を連ねる路地のモデルになったストリートも、
湯屋のモデルになった茶芸館も観光客でいっぱいでした。 私たちは炎天下の灼熱の暑さのなかふたたび朦朧となり、
蒸し暑さに加えて、中華圏の雑踏にひろがるあの独特の油と肉と人ごみの匂いが
混濁した空気にさらに不機嫌になりながらひたすら歩きつづけました。 そして、やっとたどり着いたのは有名な茶芸館。
茶芸館とは、たくさんの台湾茶を正式な煎れ方でいただくことのできる
喫茶店のこと。 冷房の効いた伝統的なインテリアで美しく彩られた茶芸館で、
わたしたちはゆっくりとおいしい中国茶をいただきました。
すでに日は暮れて、狭い路地にはたくさんの提灯に灯がともり始めます…、 それこそ、
あの千が迷い込んでしまった妖怪たちの街のような雰囲気が巷を覆い尽くしていきます。 東シナ海につきでた岸壁にできた不思議な雑踏のなかで
意識が「ここではないどこか」へいってしまうそうになりながら私はふとっ思ったのです。 いくら映画の舞台や人気アニメのモデルになったとはいえ、
ただの片田舎の街にこれほどの人たちがひっきりなしに
訪れるのか…映画の舞台やドラマのロケ地になった場所など、どこにもあります。 それらがどこも人気観光地になっているか…? そんなことありません。 むしろ、一時的に人気がでても、時間の経過とともに
あっというまに人気は消えていのがロケ地の常です。
しかし…九份はいまだに訪れるひとが絶えない…。 そして私は腑に落ちました。 それは九份という街の歴史を観れば一目瞭然でした。
九份は実はその昔台湾有数の金鉱があった地域なのです。
金鉱…ゴールドマイン。金はやはり活火山のある地域に多く存在します。
金に限らず、特に強力なパワーを持つ鉱物はほとんど火山とその地底の地殻変動により
誕生します。 つまり、九份もじつは火山の女神、鉱物の女神がほほ笑む場所、怒る場所なのです。
そして多くの人たちは無意識で、その鉱物の高いパワーを受け取りにやってきます。
富士山に古来から人々が詣でたのか、 阿蘇になぜ人々は惹かれるのか、浅間山の近隣の軽井沢、
草津温泉になぜ世界中から観光客が訪れるのか…。 それは表面的には有名観光地であるということになりますが、
そもそも有名観光地の素地をつくったのは、
つまり火山の生み出すさまざまなパワーが古来より人々を惹きつけつづけたからなのです。 ゆえに台湾においても事情はまったく同じで、九フンにたくさんの人たちが集まるのも、
北投温泉に人が集まるのもそれはそもそも火山と鉱物の女神の引力だったというわけです。 つまり私はすでに台湾にいるときから、糸魚川フォッマグナの姫君の引力に
完全につながっていた…ということなのです。
ゆえに私はなによりもまず自分のお土産にかなり高額の投北石のブレスレットを
購入したのです…。 奴奈川姫…恐るべし…。 つづく